ビジネスアナリシス資格の教科書であるBABOKとは?【CBAP®有資格者が徹底解説!】

目次

最初に

中小企業診断士、ビジネスアナリシス資格であるCBAP®・ECBA™資格者の大石と申します。宜しくお願い致します。

この記事では、

  • ビジネスアナリシス資格の具体的な内容を知りたい!
  • 業務改善の実務をさらに効率よく進めたい!
  • ビジネスアナリシスを実務に活用する流れを知りたい!

という方に向けて、ビジネスアナリシス資格の教科書である「BABOKの具体的な内容」について解説します。

本記事は、ビジネスアナリシスの手法が体系的に記載されているBABOKガイドの内容を基に作成しています。

結論

BABOKとは「ビジネスアナリシス知識体系ガイド」と呼ばれる書籍であり、以下10個の項目にて構成されています。

  • 序論
  • ビジネスアナリシスの主要コンセプト
  • ビジネスアナリシス計画とモニタリング
  • 引き出しとコラボレーション
  • 要求のライフサイクル・マネジメント
  • 戦略アナリシス
  • 要求アナリシスとデザイン定義
  • ソリューション評価
  • 基礎コンピテンシー
  • テクニック

また、ビジネスアナリシスは業種を問わず幅広く活用することのできる考え方です。近年では特にITシステムの導入を進める際に活用されています。

ビジネスアナリシスとは

ビジネスアナリシスとは、「ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こす専門活動」のことを指します。

上記はBABOKにおいて記載されている内容なのですが、上記の表現ですと具体的な内容がわかりづらいですが、「経営課題と解決策を繋ぎ、解決策を推奨し、組織変革に導くための活動」と解釈すると理解しやすいです。

さらに具体化すると、「経営陣や各部門といった利害関係者が抱えるビジネス上の問題に対して対処すべき課題(要求)を引き出し、その課題の解決(要求の実現)に向けて組織変革を進める活動」となります。

上記のような活動を事項する上で必要となってくるのが、CBAP®等で勉強する専門知識です。

ビジネスアナリシス活動の流れ

活動の大きな流れは以下になります。

STEP
前提知識

「序論」「ビジネスアナリシスの主要コンセプト」を通して、ビジネスアナリシスの基本的な考え方を確認します。

STEP
情報収集

「ビジネスアナリシス計画とモニタリング」「引き出しとコラボレーション」を通して、組織における問題に関する情報を収集します。

STEP
ニーズの整理

「要求のライフサイクル・マネジメント」を通して、出てきたニーズを整理し、解決すべき課題を設定します。

STEP
課題解決における方針の決定

「戦略アナリシス」を通して、課題解決における方針を決定します。

STEP
解決策の決定と実行

「要求アナリシスとデザイン定義」を通して、具体的な解決策を決定し、実行します。

STEP
全体評価

「ソリューション評価」を通して、全体の活動において得られた価値を評価します。

上記の流れを通して、企業の変革及び業務改善を進めることができるという考え方になります。

各項目における具体的な内容

各10項目における具体的な内容について解説します。

序論

まず、「序論」の項目は以下の内容です。

要素概要
ビジネスアナリシスとは経営課題と解決策を繋ぎ、解決策を推奨し、組織変革に導くための活動である。
ビジネスアナリストとはBABOKに記述されたタスクを実施する人であり、肩書や組織上の役割を問わない。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

ビジネスアナリシスの主要コンセプト

次に、「ビジネスアナリシスの主要コンセプト」は以下の内容です。

要素概要
ビジネスアナリシス・コア・コンセプト・モデルチェンジ」「ニーズ」「ソリューション」「ステークホルダー」「価値」「コンテキスト」の6つの用語から成り立つフレームワーク。各コンセプトについて理解を深めることで、より良いビジネスアナリシスを実践していくことができる。
主要な用語エンタープライズ」「要求」「デザイン」など主要な用語の意味を解説。
要求分類のスキーム要求は「ビジネス要求」「ステークホルダー要求」「ソリューション要求」「移行要求」のいずれかに分類できる。
ステークホルダー業務領域の専門家」「スポンサー」「プロジェクト・マネジャー」「顧客」「ビジネスアナリスト」「エンド・ユーザー」など主要なステークホルダーの意味を解説
要求とデザイン要求は「ニーズ」に焦点を当て、デザインは「ソリューション」に焦点を当てた表現であることを解説。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

ビジネスアナリシス計画とモニタリング

次に、「ビジネスアナリシス計画とモニタリング」は以下の内容です。

要素概要
ビジネスアナリシス・アプローチを計画するビジネスアナリシス作業を実施する時に取るべき手法や、タスクの遂行時期、生成される成果物などについて計画する。
ステークホルダー・エンゲージメントを計画する関係するすべてのステークホルダーを特定し、その特性を分析することで、ステークホルダーへのアプローチ方法について計画する。
ビジネスアナリシス・ガバナンスを計画する意思決定を行う意思決定者は誰か、またどのようなプロセスで決定するかを特定し、明確にする。
ビジネスアナリシス情報マネジメントを計画する情報の保存方法とアクセス方法を決める。
ビジネスアナリシス・パフォーマンス改善策を特定するビジネスアナリシスのパフォーマンスを監視し、事前に決めたパフォーマンス測定項目を基に測定結果を分析することで改善に繋げる。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

引き出しとコラボレーション

次に、「引き出しとコラボレーション」は以下の内容です。

要素概要
引き出しを準備する情報を引き出す目的を念頭に置きながら、情報を引き出すためのテクニックを決定したり、必要な補足資料の準備をする。
引き出しを実行するビジネスアナリシス活動に必要な情報を収集する。
引き出しの結果を確認する一貫性を確保するために、その情報源及び引き出しの結果と比較し、正確かどうかを確認する。
ビジネスアナリシス情報を伝達する各ステークホルダーに理解してもらえるような形式で情報を伝達する。
ステークホルダーのコラボレーションをマネジメントするステークホルダーとコミュニケーションを取ることで関係を構築し、ビジネスアナリシス活動に参加するよう働きかける。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

要求のライフサイクル・マネジメント

次に、「要求のライフサイクル・マネジメント」は以下の内容です。

要素概要
要求をトレースする各要求の系統を明らかにして文書化し、他の要求との関係を考慮しつつ、ソリューションが要求に沿ったものであるかを確認する。
要求を維持する継続しているニーズを表現している要求を、時間が経過しても常に妥当であるように維持する。
要求に優先順位を付ける便益やコストなどを考慮して各要求にランクを付け、優先順位を決定する。
要求の変更を評価する新しいニーズが生じたり、可能性のあるソリューションが新たに明らかになったりしたときに、こうしたニーズやソリューションを評価し、変更を行うかどうかを判断する。
要求を承認する要求やデザインなどのビジネスアナリシス情報を承認に責任を負うステークホルダーに確実に伝達し、承認を得る。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

戦略アナリシス

次に、「戦略アナリシス」は以下の内容です。

要素概要
現状を分析するエンタープライズの現状を明確に理解することで、チェンジとチェンジ戦略の必要性が妥当かどうかを判断する。
将来状態を定義する望まれる将来状態を達成するために必要な条件を具体化して記述する。
リスクをアセスメントするチェンジにおいて想定されるリスクの分析とマネジメントを行い、集めたリスクはチェンジ戦略の選択または調整のインプットとして使用する。
チェンジ戦略を策定する現状の分析結果と将来状態の定義内容を基に、チェンジするためのアプローチをいくつか作成し、一つを選択する。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

要求アナリシスとデザイン定義

次に、「要求アナリシスとデザイン定義」は以下の内容です。

要素概要
要求を精緻化しモデル化する引き出しの結果を基に、ニーズの理解しやすい表現である「要求」と、ソリューションの理解しやすい表現である「デザイン」に落とし込む。
要求を検証する「要求を精緻化しモデル化する」タスクにてアウトプットとして変換された要求とデザインが、使用目的に適しているかを確認する。
要求の妥当性を確認する各要求が、ビジネス要求と整合しているかどうかを確認し、デザインが要求を満たすことを確実する。
要求アーキテクチャーを定義する全ての要求をあたかも一つのものであるように表現し、目標達成をイメージしやすくする。
デザイン案を定義する各要求の満たし方を検討することで、複数のデザイン案を用意する。
潜在価値を分析しソリューションを推奨する示されたデザイン案の中から提供される便益を考慮し、どのソリューションを進めていくかを決める。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

ソリューション評価

次に、「ソリューション評価」は以下の内容です。

要素概要
ソリューション・パフォーマンスを測定する新規導入または既存のソリューションが機能しているかどうかを測定し、ソリューションの価値を決定する。
パフォーマンス測定結果を分析するパフォーマンス測定結果が、ソリューションを用いて達成したいと考えている潜在価値を提供できているかどうかを分析する。
ソリューションによる限界を評価する新規導入または既存のソリューションが機能しているかどうかを測定し、ソリューションの価値を決定する。
エンタープライズによる限界を評価する低パフォーマンスとなっている根本原因を追究する上で、エンタープライズ要因が価値の実現をどう制限しているかを特定する。
ソリューションの価値を向上させるアクションを推奨する実施したソリューションをどのように改善していくか、廃止するか、機能拡張するかを明確にする。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

基礎コンピテンシー

次に、「基礎コンピテンシー」は以下の内容です。

要素概要
分析的思考と問題解決ビジネスアナリストが問題と機会を適切に分析し、どのようなチェンジを遂行すれば最も大きな価値が得られるかを判断するためのスキルについて記載。
行動特性ビジネスアナリストがステークホルダーからの信頼と尊敬を得られるようになるためのスキルと行動について記載。
ビジネス知識自分のビジネス、業界、組織、ソリューション、方法論の中で効果的に仕事をするための知識について記載。
コミュニケーションのスキルコミュニケーションを効果的に行うためのスタイルやテクニックについて記載。
人間関係のスキルビジネスアナリストが、経営陣やスポンサー、同僚、チーム・メンバー、開発者、ベンダー、学習や育成の専門家、エンド・ユーザー、顧客、当該分野の専門家などさまざまな人たちと関係を構築・協力し、コミュニケーションを図っていく能力について記載。
ツールとテクノロジービジネスアナリシス活動を行う上で利用することが予想されるツールについて記載。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

テクニック

最後に、「テクニック」は以下の内容です。テクニックは計50個紹介されており、以下は一部抜粋になります。

要素概要
観察対象を見て理解することで、ニーズや機会を発見し、ビジネス・プロセスの理解やソリューション・パフォーマンスの評価、トレーニング支援などの基盤として使用するためのテクニック。
インタビューインタビュー対象者と話し、関連する質問をして、回答を文書化し、個人やグループからビジネスアナリシス情報を体系的に引き出す方法ビジネスアナリシス活動に必要な情報を収集するテクニック。
ワークショップ主要なステークホルダーや当該分野専門家が参加する、短時間に集中して目的を絞ったイベントを開催するテクニック。
データ・モデリング業務にとって重要な要素(人、場所、物、取引など)、その要素に関連する属性、それらの間の重要な関係を視覚的に表現するテクニック。
プロセス・モデリング作業やアクティビティーの一連の流れを記述することで、作業がどのように遂行されるかを理解しやすくするテクニック。
データ・フロー図データの源泉やそのデータを処理するアクティビティーが何かを明らかにし、結果のアウトプットが保管されるのか、あるいは別のアクティビティーや外部のエンティティによって利用されるのかどうかを図で示すテクニック。

BABOKガイドより抜粋・一部編集

ビジネスアナリシス活動における注意点

この活動における注意点として、「なぜ変革する必要があるのかを常に考え続ける」必要があります。活動が進むにつれて、様々なニーズが判明し、当初の目的を見失ってしまう場合があります。状況に応じて臨機応変に対応することも大切ですが、「変革してでも達成したい目的」を忘れて進めてしまうと目的達成からは遠のいてしまいます。

立場の違う利害関係者たちと密にコミュニケーションを取り合い、落としどころを探っていくのがビジネスアナリストの役割です。利害関係者のご機嫌取りは仕事ではありません。「変革が必要な理由」を考え続け、目的意識をもって活動を進めていきましょう。

まとめ

BABOKとは「ビジネスアナリシス知識体系ガイド」と呼ばれる書籍であり、以下10個の項目にて構成されています。

  • 序論
  • ビジネスアナリシスの主要コンセプト
  • ビジネスアナリシス計画とモニタリング
  • 引き出しとコラボレーション
  • 要求のライフサイクル・マネジメント
  • 戦略アナリシス
  • 要求アナリシスとデザイン定義
  • ソリューション評価
  • 基礎コンピテンシー
  • テクニック

また、ビジネスアナリシスは業種を問わず幅広く活用することのできる考え方です。近年では特にITシステムの導入を進める際に活用されています。

弊社では、事業者様に合わせた業務改善サービスを提供しております。経営の専門家である中小企業診断士がサポートさせていただきますので、ぜひご検討ください。各種専門家派遣制度についてもご利用いただけます。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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